池袋にある資産管理会社のノウハウブログ

マニフェストって何?やる意味ある?

イスや机、パソコンなどの社内資産を管理する上で必ず発生する「モノを廃棄する」行為。年度末の今時期、什器備品を一斉に入れ替える企業もあるかもしれませんね。そんな廃棄資産の管理、ちゃんと行っていますか?廃棄管理はとっても重要ですよ。

今回は廃棄資産の管理でよく聞く単語「マニフェスト」にフォーカスして、どういった制度なのか、そしてどれだけ意味のあるものなのか、我々の考察をお話ししたいと思います。

マニフェストとは

マニフェストとは、産業廃棄物を処理する際に記載する伝票「産業廃棄物管理票」のこと。1990年に厚生省(現在は環境省管轄)の行政指導によって運用が開始され、1993年には法制化しマニフェストの使用が義務化されました。

不法投棄を未然に防ぐための制度

マニフェスト制度が導入される以前は、山の中に捨てられた大量の産業廃棄物の映像がたびたびテレビで放映され、不法投棄が社会問題となっていました。委託企業からお金だけを受け取って不法投棄するといった悪質な業者もあれば、廃棄物処理業界で働く外国人労働者の方の倫理観の違いから、不適切な処理が行われてしまうことも多々。

これらを解決するため、廃棄物を出した側に責任を持たせ、適切な廃棄処理が行われたかどうかを最後まで確認させる制度として導入されたマニフェスト。廃棄物を出した側が処理の流れを追えるので、悪質な業者への依頼を避けることができるしくみができあがりました。

廃棄物の引き渡し時に交付する伝票

マニフェスト伝票の流れ

マニフェストは7枚綴り(A票、B1票、B2票、C1票、C2票、D票、E票)になった複写式の伝票。廃棄物を出す側は、廃棄物の引き渡し時に委託業者にこの伝票を手渡します。委託された業者、中間処理業者、最終処分業者は、自身の業務が完了した段階でそれぞれの伝票を廃棄元の企業に返送し、業務が完了したことを報告します。

マニフェストが期限内に返送されなかったら、どこかの工程で処理に不備があった可能性大。特にB2票、D票、E票が返ってこない場合は、廃棄物を出した企業は責任を持って都道府県に「措置内容報告書」を提出しなくてはなりません。

マニフェストを交付せずに処理を行ったり記載内容を偽ったり、あるいは5年間の保管義務を守らずに伝票を破棄した場合、廃棄物処理法違反とみなされて「1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金」に処せられます。さらに都道府県の措置命令に従わなかった場合は「5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金」に…。怖い怖い😱

みんなちゃんと管理してるの?

ここまで聞くととても効力のある制度に感じられますね。しかし、当社のお客様が真剣にマニフェストの管理に取り組んでいらっしゃるかというと、正直疑問。「マニフェスト?まぁ知ってるけど」くらいの感覚の方がほとんどのように思います。

建設資材廃棄物や工場で発生する廃棄物などはしっかり押さえられているようですが、社内の什器や備品の処理となると、なかなかマニフェスト管理が浸透していない様子。なぜでしょうか。

管理意識が低い理由①:そもそも知らない

会社で契約している産廃業者へ処理を委託しているし、ちゃんとお金を払っているし、廃棄物回収後は書類を渡されるから、あとは業者が責任を持って処理してくれるもの、と勘違いしているケース。いやいや、最終処分が完了したかどうかまで追うのがマニフェスト管理です。回収してもらったらそこで終わり、ではないんです。

管理意識が低い理由②:手間だから

制度のことは知っているけど、手間だしバレる可能性も低いからやっていない、というケース。最後のE票が返ってくるのはだいぶ先なので追うのは面倒だし、罰則はあるものの抜き打ちチェックの制度はない。上場企業であっても備品の廃棄方法で監査指摘が入るという話はあまり聞かないし、国税調査だって産廃業者からもらった書類を見せればそれで通る。「だからいちいち気にかけてません」という方、多いです。

制度を徹底するべきか

さて、我々は資産管理会社です。お客様に対して「マニフェストの管理を徹底しましょう!」と強くすすめるべきでしょうか。法令遵守の観点では「管理する」が正解なのですが、それを押し通せない理由があります。

マニフェスト管理の問題点「管理単位」

マニフェストに記載する廃棄物の「単位」は自由。「トラック〇台分」という記載も「一山分」という表現も許容されています。これでは不法投棄を簡単に隠蔽できてしまうと思いませんか?企業がパソコンを100台廃棄したとして、産廃業者が「軽トラック1台分」と記載し、10台だけを次の中間処理業者に手渡し、残りの90台を不法投棄することも可能ですよね。

本来マニフェストは排出事業者(廃棄物を出す企業)が記載するべきなのですが、ほとんどの場合は産廃業者が廃棄物を受け取る際に記載しているのが実情。仮に排出事業者が「パソコン100台」と記載したとしても、業者は受け取った廃棄物をそのまま積み込むだけなので、数のチェックなんてしていません。中間処理業者に渡ったときに台数が減っていたとしても、誰も気づくことはありません。


こういった現状を踏まえると、我々も「マニフェスト管理を徹底すれば不法投棄を撲滅できます!」とは言えないのです。中間処理業者や最終処分業者が数量単位で廃棄物を確認するような運用が整えば改善される可能性はありますが、現状の体制では無理かもしれません。

環境省の発表によれば「現在の不法投棄はピーク時の10分の1にまで減っている」というのがせめてもの救い😇