📢これはオフィス備品などの社内資産をRFIDで棚卸してみる検証コーナーです。
商品在庫の話ではありませんのでご注意ください。
どんどんマニアックになってきているRFID棚卸の検証コーナー第4回。過去記事とあわせてどうぞ。
第3回の検証で「木製サイドワゴンの引き出しの中に入れたタグはスキャンできるが、スチール製サイドワゴンの場合は引き出しを開けないと読み取れない」という結果が出ました。金属は電波を透過しないので、引き出しを開けて電波の通り道を作らないといけない、と。
ここでまた新たな疑問が湧きました。
什器が木製だったとしても、普段引き出しの中に入れているほかのモノが全部非金属っていうことはないのでは?
検証の際はタグを貼ったノートパソコン1台だけを引き出しに入れてみましたが、普段引き出しの中にはいろんな小物や資料が入っていますよね。それらが読み取りに影響することはないのか?よりリアルな引き出しで検証してみたらどうなるのか?やってみようではないか🙋
検証に使うのは前回と同じ金属対応タグ、Confidex社のSilverline Blade II。このタグを貼ったノートパソコンを木製サイドワゴンの中に入れ、さらにその上からいろんな小物を詰めてみます。カタログ、電源ケーブル、歯みがきグッズ、ついでにお菓子。金属のモノもそうでないモノもいろいろ入っています。ちなみにタグが貼ってある位置の真上に載っているのは、当社のカタログ数冊と数年前のノベルティであるハンドスピナー。
引き出しの準備ができたら、デンソーウェーブ社のSP1と当社の棚卸アプリをBluetoothで接続し、0.5m刻みで読み取り開始。引き出しを閉じた状態と開けた状態の2パターンで検証します。
引き出しの開閉\距離 | 0.5m | 1m | 1.5m | 2m |
---|---|---|---|---|
閉じた状態 | △ | × | × | × |
開けた状態 | 〇 | 〇 | × | × |
【参考】小物を詰めずに閉じた状態 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
結果は前回とまったく違うものに。前回の検証でノートパソコンだけを引き出しに入れた状態では、引き出しを閉じていても難なく2m読み取ることができました。しかし今回は引き出しを開けても1mが限界です。閉じた状態に至っては0.5mも苦しく、間違いなく読み取れるのは0.3mかなといったところ。
真上にあるハンドスピナーの影響かもしれないと思い、ハンドスピナーを除いた状態でも試してみたのですが、結果は変わらず。さらに紙のカタログも除いてみたところ、ようやく2mでも読み取れるようになりました。木製の引き出しよりも、厚さ1cm足らずの紙の束がそんなに影響するとは…?むむむ。
小物で覆うのではなく、タグを貼った資産自体が重なっている場合はどうなのよ?ということで、タグを貼付したノートパソコンを2台重ねる検証もしてみました。重ねたノートパソコンを何もない木製デスクの上に置き、上と下のタグがそれぞれどのくらい読み取れるのか試してみます。
場所\距離 | 0.5m | 1m | 1.5m | 2m |
---|---|---|---|---|
上 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
下 | 〇 | 〇 | × | × |
上のタグが何の問題もなく読み取れるのは予想通り。下のタグは0.5mも無理なのではと思いましたが、1mでも読み取ることができました。ということは、ノートパソコンの上に載っているモノが紙のカタログであろうと金属のパソコンであろうと、読み取り距離は同じであるということ。金属と非金属では透過度合いが違うはずなのになぜ?
我々の考察としては、「タグの上にちょっとでも空間があるかどうか」がかなり重要なのではないかと思います。ノートパソコンを重ねたとき、タグを貼付した部分は完全には密着しておらず、ほんの少し空間がありました。この空間に電波が入り込むことで、「電波を透過しない」と言われている金属でも多少の結果が出せたのではないかなと。
一方、タグの上に紙のカタログを載せた検証では、タグとカタログは密着していて、タグの上に空間はまったくありません。紙は電波を透過しますが、タグの表面を覆ってしまうことによりタグに圧力がかかり、電波をリーダーに返す力が弱まってしまったと思われます。「金属じゃないから大丈夫」ではないんですね。
「そんなに潰されたら投げ返す力が出ないよー」って感じ?
タグの上に空間がなく電波が届きにくい状態では、読み取り精度は著しく下がるということがわかりました。これは言い換えると「棚や引き出しにしまってある資産を全部出してからスキャンするくらいしないと、RFIDのメリットが大幅に減ってしまう」ということ。
RFIDは画期的な技術だけれど、完璧ではない以上、「こんなときはどうするのか」という運用ルールをあらかじめ決めておかなければ、スキャンできない資産(=あるのか無いのかすらわからない資産)がたくさん出てしまいそう。
では具体的にどんなことを決めておくべきなのか。そもそも自社の環境はRFID導入に適しているのか。また別記事で改めてまとめたいと思います。