池袋にある資産管理会社のノウハウブログ

タグを貼る場所によって読み取り精度が変わる?【RFID棚卸検証】

📢これはオフィス備品などの社内資産をRFIDで棚卸してみる検証コーナーです。
商品在庫の話ではありませんのでご注意ください。

RFID棚卸の検証コーナー、第1回目は「イスにタグを貼ったらどのくらい離れたところからスキャンできるのか」を実験してみました。

第2回となる今回は、「同じイスでもタグを貼る場所によってスキャン精度は変わるのか?」を試してみたいと思います。前回はイスの背もたれ部分にタグを貼ってみましたが、イスのデザインによっては背もたれが布地張りで貼れないということもあるでしょうし、いろいろ場所を変えて検証してみます。

脚の場合は?座面の裏は?

検証に使うタグは前回と同じくConfidex社のCarrier Pro。このタグを背もたれ、腰部分、アームレスト、座面の裏、脚の5か所に貼ってみます。タグが大きいので微妙な貼り方になっている点は無視していただきたいですが、実運用ではタグのサイズも重要ポイントですよね。大きすぎると貼る場所に悩んでしまいますし。

タグを貼ったイスを壁の前に置き、1m刻みに5mまで離れて読み取り検証をしてみます。読み取りに使うRFIDリーダーは、こちらも前回と同じデンソーウェーブ社のSP1。SP1と当社の棚卸アプリをBluetoothで接続し、いざ検証開始!結果は…👇

貼付場所\距離1m2m3m4m5m
背もたれ
腰部分×××
アームレスト
座面の裏
×××××

腰部分はなぜか距離が稼げない。そして脚はまったく反応しませんでした。

別のタグで試してみよう

脚に貼っても読み取れないということは想定していました。なぜなら今回使用したCarrier Proというタグは「金属以外のモノ」に貼るために作られたタグ。検証に使ったイスの脚は金属なので、読み取れないのは仕様通り。

では、金属でも読み取れるタグを使って同じ検証をしてみたらどうでしょうか。今度はConfidex社のSilverline Blade IIという、金属に対応したタグを試してみます。

Carrier Proより横幅が短め
貼付場所\距離1m2m3m4m5m
背もたれ
腰部分
アームレスト
座面の裏

完璧。

金属に対応したタグ、対応していないタグ

今回の検証では「Carrier Proは場所によっては読み取れない、Silverline Blade IIは貼る場所を選ばない」という結果になりました。ただこの結果だけを見るとCarrier Proの良さがまったくわからないので、それぞれの特徴を簡単に挙げておきます。

アンテナの大きさの違い

タグの横幅はCarrier Proが92mm、Silverline Blade IIが60mmと、Carrier Proのほうが少し大きくなっています。これは中に入っているアンテナの大きさの違いです。アンテナが大きいということは遠くの電波も受信しやすいということ。先ほどの検証を5mから10mに変えてみたところ、Carrier Proはイスの座面裏のタグを10mまで読み取ることができたのに対し、Silverline Blade IIは7mが限界でした。

Carrier Proは金属には弱いものの、そうでなければSilverline Blade IIより好成績を叩き出すこともしばしば。

価格の違い

Silverline Blade IIは金属に対応している分、お値段はCarrier Proよりもお高め。最近は価格が常に変動していますが、2023年3月現在のタグ1枚あたりの価格はCarrier Proが100円超、Silverline Blade IIが200円弱といったところ。倍まではいきませんがそれなりの価格差があります。タグを貼る場所が金属ではないとわかりきっているのであれば、Carrier Proを選んだほうがお財布に優しいですね💰

タグを使い分けるのは大変

さて、ここまでをまとめると

  • タグの種類や貼る場所によって読み取り精度が変わる
  • 金属に貼る場合は金属対応のタグ一択
  • 価格が安いのは金属に対応していないタグ

となりますが、もし我々が棚卸担当者でタグを選ぶ立場だとしたら、貼る対象物が何であろうがどこに貼る場合であろうが、金属対応のSilverline Blade IIを選びます。理由は「悩まなくて良いから」。

貼付場所\距離1m2m3m4m5m
腰部分×××

Carrier Pro検証の「腰部分」の結果をもう一度見てみてください。2mまではなんとかスキャンできたものの、3mでは読み取れなくなっています。タグを貼った場所の素材はポリプロピレン(プラスチック)なのに!裏に小さなネジがありましたが直接触れていないですし、どうしてこうなったのかは正直わかりません🤔

金属素材ではないのにこういう謎の現象が起こってしまうと、たくさんの資産に対してどのタグを貼るか毎回悩んで時間がかかってしまいそうですね。複数人で貼付したら、Aさんは金属対応、Bさんは金属非対応のタグを同じ種類の資産に貼っていた、なんてことも頻発しそう。そして選択した結果が残念なことになっていたらさらに悲惨。当社のお客様でも「自己判断でタグを選んだら全然読み取れなかった」という方がいらっしゃいました。

貼る場所の素材をいちいち把握しなければいけなかったり、金属ではないのに何かしらの原因で読み取れない場合もあることを考えると、複数種類のタグを使い分けるのは難易度が高いように感じます。割高ではあっても、何にでも使えるタグ1種類に絞るのが現実的なのではないでしょうか。


タグを貼る場所の話からタグの種類の話に変わってきてしまいましたが、RFIDは奥が深いよねということです(?)。次回以降はオールラウンダーのSilverline Blade IIを基準に、検証を続けていきたいと思います!